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設営中のカーニバル裏に設えられた白いテント。
昼食が載ったトレーを手にしてロズビラバンは震えていた。
カラリと揚がった甲虫のフライ。豆と小さな幼虫のコールスローサラダ。カップにはローズマリーと野菜とフサムシのスープ。一番小さい皿にはうさぎ型のリンゴ。
「うさぎリンゴ!!?」
「ロズうるせー。歩け。後ろがつかえてんだよ膝の裏蹴るぞ」
「やめて!膝カックンやめて!せっかくの食事が床に落ちるから!」
「食えるだろ。お前なら」
「ひでえ!」
周囲の奇異な目線、というよりはまたロズか、な視線を受け流し、ロズビラバンはそそくさと奥のテーブルについた。午前の裏方作業を共にしていたアイアシェッケがその向かい、壁際の端の席に座る。
トレイを置き、ロズビラバンは改めてまじまじと本日の昼食を眺める。
美味しそうだ。バランスが取れているし、彩りも綺麗だし、湯気も立っている。野菜も取りつつがっつり食べられそうな辺りが男には嬉しい。
しかし赤いものが非常に気になる。
「イグニスが剥いたのコレ」「だろ」
アイアシェッケはさらっと頷きロズビラバンは机に突っ伏した。
「うああ・・・しょっぱい。成人男性の剥いたうさぎリンゴとかしょっぱい」
「何言ってんだ。スーツ男子がうさちゃんリンゴ。最高だろ」
「そうかな!!?」
「こういうのは若いお母さんとか、あと彼女からのお弁当とか、お見舞いに来た幼馴染が不慣れな手つきで剥いてくれるものだと思うんだけど!」
「ああ・・・美味いな。だがそれだけじゃない。見ろ」
アイアシェッケは少し離れた場所を指差した。
机をつけて大きな一つのテーブルにしている。
背景担当のほんわか少女ロリー、ロゴ担当のスレンダーなお姉さんボネ、修理士の男勝りなお姉様チュール、ジャグラーのボーイッシュ女子ペロキャン、怪物使いのドSお姉様マデイラ、マジシャンのツンデレ少女フレジエが、一緒にご飯を食べている。
うさぎリンゴを見てきゃっきゃしている。
「あっいいかも」
「だろ」
アイアシェッケは真理を語る目で頷いた。
「女は群れる。だから女が集団できゃっきゃしているのを眺められる。
可愛いものが生み出されれば可愛いもの+可愛い女子のセットが見られる。
この件に関してイグニスの功績は大きいと言える。違うか」
ロズビラバンは深々と頭を垂れた。
「いいえ。ないわとか思ってすみませんでした。ごめんなさい全然アリでした」
「よし。顔をあげろ。冷める」
スプーンを持ったアイアシェッケが偉そうに言う。
ようやくいただきますを言おうとして、ロズビラバンは気が付いた。
自分のリンゴがどこにもない。
いつの間にか、横にリスのような頬のヨウルトルットゥが立っていた。何の表情も浮かべていなかった。喉を上下させ、告げる。
「しょっぱくなかった」
「・・・俺のうさぎリンゴおおおお!!!!」
テントの中に大声が響き笑った。
「気付くの遅せー」ゴーグルの下で、アイアシェッケが笑った。
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